おとあそび工房の公演、 「パラパラサラダイス」「マルシェだなす!」でお世話になった 小林ファームさんのご協力のもと、 おとあそび工房の番外編、「畑の音を聴く」を5月4日に行いました。
「農福連携」という耳障りの良い言葉の実態や、 おとあそび工房の活動での地域、役所、芸術、福祉など、 様々な疑問・問題をそれぞれ抱えながら、 メンバー達も、小林さんも、 今日は何が出来るのか、今後何が出来るのか、 雲をつかむような状況でありながら、 とりあえずやってみよう! とやってきた小林ファームさん。
フルーツフラワーパーク、アウトレットへ向かう車の渋滞に巻き込まれ、
やや疲れながらも(運転の渡瀬さんありがとうございます)到着。
しかし、車を降りた瞬間の日差し、空気、景色で、 皆一瞬でワクワクを募らせ、 色めき立っている。 荷物を置くと、転がっている巨大な竹の子に興奮。 (帰りにお土産で頂いてしまった!)
貸川さん一家が到着。
「まずはお手伝い」と、畑の草むしり。
にんにくの収穫も。
これは、子ども達の方が上手なようで、
大人たちは面目丸つぶれ。
だが、そんなことは全く気にしないメンバー達。
子ども達は、カエルと遊びだす。
しんじくん一家も到着。
すでにニコニコで楽しげなしんじくん。
天道虫、バッタ、よくわからない虫たち。
普段見かけることがないので、初めは珍しがるものの、
たくさんいるので、当たり前になってくる。
非日常が日常になる瞬間を、子ども達はどう感じたのだろうか?
「あまりたくさん無いから、子ども達の早い者勝ち」
と小林さんが言っていたいちご狩り。
予想以上にたくさん有り、 大人たちも、もいでは頬張る。
甘い!!美味しい!!
一息ついてお弁当。
先日、小林ファームさんから竹の子を買ったので、
それで作った竹の子ごはんのおにぎりを食べていると、
すぐ傍に生えていた山椒の葉をちぎって添えてくれる小林さん。
一気に高級料理に変身した。
お弁当の後、スイカの苗を植える。
あまりにもいい環境なので、
やってみた逆立ちの気持ちいいこと。
からだが環境としての自然にもまれ、
最も身近な自然であるはずのからだを取り戻していく。
渡瀬さんも逆立ち体験。
気づいたら田んぼ遊びが始まっている。
沼田さん渡瀬さんは笛を吹き、鎌田さんは踊る。
そして、しんじくんが、水たまりに座り込んでいる。
泥にまみれてカエルのように。
最高の表情を見せてくれている、しんじくん。
裸足になって気持ちよさを味わう大人達では、
理性が邪魔をして踏み込めない一歩を、 あっさりと超えてしまい、
選ばれた者だけが味わえる恍惚感を一人味わうしんじくん。
周りで踊りに入った私は一線を越えられない虚しさを少し感じる。
笛の音、風の音、草が揺れる音、 畑に足を取られる音、
気持ち良すぎて動こうとしないしんじくん。
よほど居心地が良いのだろう。
帰りの時間が迫ってきて、 またもや頭の支配に虚しさを感じながら、
しんじ君を泥の沼から抜き出す。
ホースの水で泥を洗い流している時、
しんじ君のなんて寂しそうな顔。
水の冷たさで寒イボが立ち、震えている。
心地よさから急に生活に引き戻される。
おやつを食べ、巨大竹の子やレタスをお土産に頂く。
からだの中に瑞々しい何かが満たされて、
皆、素晴らしい笑顔で農園を後にした。
増渕は、「普段のような変なお腹の空き方をしなかった。
お弁当も食べ過ぎずに、適当な所で止めることが出来た。
“カスミを食べる”ということかな」と言っていた。
確かに、そんな感覚。
“カスミ”かどうかは分からないが、なぜか満たされ、
「もっともっと」という欲望が少ない。
“カスミ”と共に口に入るビールとたばこが美味い。(欲望ですな)
おとあそび工房、小林ファームさん、それぞれの抱える問題に、
答えは出ないかもしれない。
がそんな事を考えなくて、こんなにも楽しく、活き活きと遊べる。
次回の公演での野菜の協力をお願いした小林ファームさん。
芽が出るかどうか分からない。
でも、何かの種は植えることができたのかもしれない。
そんなボンヤリした種から、楽しい芽が出るといいな。
文章:白藤学史